AIはいずれ、空気や水道と同じインフラになる。そうなれば、ツールを少し弄れるだけの「AIコンサル」や「にわかクリエイター」の価値はゼロになり、世界は泥臭いマンパワーと本物の技術がモノを言う「AI前の時代」へと回帰していく。
私がこれまで言い続けてきたこの予測は、2026年のいま、想定を遥かに超えるスピードで現実になった。
しかし、この「魔法が解ける現象」は、ビジネスの現場だけに留まらない。もっと残酷な形で、若者たちの「生き方」そのものを直撃している。
断言しよう。若者がネットやAIを使って、ラクに、あるいは過激に「一攫千金の夢」を見られたボーナスタイムは、完全に終わった。
かつてインターネットは無法地帯だった
かつてインターネットは、何の後ろ盾もない若者が、音楽、声優、ライブ配信、あるいは生成AIを使ったグレーな情報発信といった「アングラな狂騒」に飛び込み、一発逆転を狙える無法地帯だった。しかし、AIの急速なインフラ化と、国家レベルの強烈な法規制によって、その抜け道は完全に塞がれた。
1. 音楽・声優:供給過多が夢をコモディティ化させた
音楽や声優といった、かつて若者が憧れた花形の表現世界は、AIの進化によって皮肉にも「誰もが瞬時に作れるゴミ」へと成り下がった。
主要な音楽配信プラットフォームの一つDeezerでは、2026年6月時点で完全なAI生成楽曲が1日あたり約9万曲に達し、新規アップロードの5割を超えたと公表されている。一方で、その再生シェアはわずか1〜3%にとどまる。タイムラインはAIの作った「それっぽい曲」で溢れかえり、若者が心血を注いで作った曲は、アルゴリズムの濁流に一瞬で飲み込まれていく。
声優の世界も同じだ。誰でも、どんな声でも、AIで精巧にシミュレートできるようになった結果、「声優になる」という夢自体の希少価値が暴落した。ツールのコモディティ化は、表現の民主化ではなく、「表現の無価値化」をもたらしたのだ。全員がクリエイターになれる世界では、誰もクリエイターを崇めない。
2. グレーな情報発信ビジネス:脱法ビジネスの完全な絶滅
最も象徴的なのは、生成AIを使ってグレーなコンテンツを量産し、情報商材やファンクラブサイト、SNSでばら撒いて小銭を稼いでいた若者たちの末路だ。これまで「テクノロジーのグレーゾーン」として見逃されていたこの領域には、国家とプラットフォームの命をかけた包囲網が敷かれた。
2025年4月1日に施行された「情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)」の本格始動により、X(旧Twitter)やYouTubeなどの大規模プラットフォーム事業者は、権利侵害の投稿に対して、削除申出を受けてから原則7日以内に対応可否を判断することが義務付けられている。総務大臣の是正命令に違反した場合には最大1億円の罰金が科されるため、運営はこれらの投稿を二度と見逃さない。他人のリソースを盗み、AIでグレーなコンテンツを量産して承認欲求と小銭を満たすような脱法ビジネスは、文字通り「絶滅」したのだ。
3. ライブ配信:過激さで数字を稼ぐ「モラルハザード」の終焉
ライブ配信プラットフォームでの、投げ銭をめぐるモラルの低下や炎上商法も、もはや逃げ場はない。かつては「過激なことをすればバズる」「炎上すれば金になる」という甘い夢があった。しかし、視聴者の側もすでに「AIが自動生成したフェイク」や「仕組まれた炎上」に触れすぎて、完全に広告不感症・コンテンツ不感症に陥っている。大衆は、他人のモラル低下を消費することに心底飽きてしまったのだ。
規制の強化と決済手段の年齢制限の厳格化により、危険行為や過度な露出で投げ銭を巻き上げる配信スタイルは、瞬時に自動遮断される。アングラな狂騒で食っていけた「にわかインフルエンサー」たちの生息地は、完全に焼き払われた。
魔法が解けた焼け野原で、若者はどこへ向かうべきか
2026年、AIの完全なるインフラ化とともに「ネットの隙間でラクに稼ぐ」という夢は死んだ。AIを使えば誰でも素晴らしい成果物(に見えるもの)を出せるようになったからこそ、「AIがないと何もできない、指示を出すだけのオペレーター」や「にわかフリーランス」の市場価値はゼロになった。
では、この冷え切った焼け野原のあとに、何が残るのか。結局は、「人間を雇ってちゃんと教育し、泥臭いマンパワーで突撃するリアルな営業力」であり、「有能な人間が自分の頭で組んだ堅牢な仕組み」という、極めて地道で手触り感のある世界だ。「ネットやAIが、自分を何者かにしてくれる」という若者の歪んだ夢は完全に終わった。道具に踊らされる時間は終わりだ。
結局、ブームに左右されない仕事はFXしかない
僕はFXを20年以上やってきたが、いろんなビジネスを見てきて、結局のところ、ブームに左右されない仕事はFXしかないなと思っている。
意外に思われるかもしれないが、衣食住に関わる仕事ですら、ブームに左右される。お米だって、品種や産地がブームになったり、価格高騰のニュースで買い方が変わったりする。不動産だって、金利動向や再開発の噂、エリアの人気度で価値が乱高下する。人間が生きる上で必要不可欠なはずのものでさえ、時代の空気や流行から完全には逃れられない。
でもFXは違う。相場と向き合い、判断し、振り返る。この構造は、AIがどれだけインフラ化しようが、どんな法規制が敷かれようが、どんなブームが来ようが変わらない。他人の承認欲求を煽って小銭を稼ぐビジネスでもなければ、供給過多で無価値化する表現でもない。
これからは、インフラ化したAIをただの背景として従え、自分の足で歩き、自分の頭で泥臭い価値をもぎ取りにいく「人間のリアルな突破力」を持つ者だけが、この現実世界を生き抜いていく。その突破力を、どこで磨くか。僕はFXだと思っている。